子どもオンブズ・コラム 令和7年5月号 「おとな」であるということ

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ページ番号1022327  更新日 令和7年5月12日 印刷 

「おとな」であるということ

渡邊オンブズパーソン
渡邊オンブズパーソン イラスト

 川西市では、この4月1日に、「川西市こども・若者参加条例」が施行されました。ここでいう「こども」「若者」とは何かについては、同条例第2条に定義されています。
 同条1号では、「こども」とは「18歳未満の全ての者その他これらの者と等しく権利を有すると認められる者をいう。」、「若者」とは「18歳から29歳までの全ての者その他これらの者と等しく権利を有すると認められる者をいう。」とされています。

 ん??単に「こども」は18歳未満、「若者」は18歳から29歳までの者だけをいうのではなさそうです。「その他これらの者と等しく権利を有すると認められる者」ってなんだ?という疑問がないではありません。法律家は屁理屈が好きですので、「53歳の私だって、こどもや若者と等しく権利を有すると認められるはずだから、「こども・若者」に含まれるはずだ!」という主張をしたくなります(しませんけど)。

 そもそも、この「こども・若者」というネーミングは、こども家庭庁の発足と同庁の「こども・若者育成支援」の施策がその発端だと思われます。ところで、「こども基本法」でいう「こども」とは、「心身の発達の過程にある者をいう。」(同法第2条1項)とされており、年齢で区分されていません。立法当時、大いに話題になった論点のひとつであり、年齢で分けないことが「子ども」ではなく「こども」と表記された理由の一つであるようです。ちなみに、こども家庭庁は、令和4年9月に、わざわざ「『こども』表記の推奨について(依頼)」という事務連絡を出しています。

 「心身の発達の過程にある者」をいうのなら、やはり私も精神的にはこども基本法の保護の対象ではないか、という気がちょっとしますが、さすがにそのような恥ずかしい主張をしたいわけではありません。いずれにせよ、「こども」とは、国でも川西市でも、極めて抽象的で明確さに欠ける用語なんだと改めて思わずにいられません。偉い専門家の人達が制定した法律、条例ですので、結構大事なことをこんなふうにあいまいにするのが、もはや昨今のトレンドになっているのかもしれません。

 他方で、この「こども」概念は、児童福祉の世界では、年齢で切り捨てずに保護の対象とし続ける意義は非常に大きいとされており、プラスの評価も計りしれません。 それはそうとして、であれば「おとな」とはどのような人を指すのでしょうか。少なくとも、今の「トレンド」に従えば、何年生きていると「おとな」になったといえるのか、という問題設定自体が誤りであるといえそうです。

 私の現時点での結論は以下のとおりです。以上のような不可解?なことに直面しても、黙ってそれを受け入れる、言い換えれば自分と違う考えをも吸収する。あるいは、自分の考えが誤っている可能性を常に念頭に置いておく、これがおとなとしてのふるまいなのではないかと考えています。良くいえば「他人をリスペクトできる人」、悪くいえば「自分の意見を押し通せない気の弱い人」が、おとなと言えるのではないでしょうか(どこかの国の大統領がおとなかこどもか、という話をしたいわけではありません、念のため)。

 世間は多様性の時代です。法律上、かつては全て20歳で成人でしたが、今では民法上は18歳で成人、しかし18歳になってもお酒もたばこもできるわけではありません。つまり、法の求める趣旨によって「おとな」の概念を変えるという、一見するとアクロバティックな考え方が当然になっています。もう何もかもが昔の考え方とは違う、ということができそうです。

 お気づきの通り、他人の意見を常に受け入れて妥協する人は、裁判や争いごとを生業とする弁護士という仕事に致命的に向いていません。私は最近、ようやく「おとな」としてのふるまいが多少わかるようになってきて、長年携わってきた仕事は、「おとな」には根本的に向いていないことに気づいた次第です。

執筆 代表オンブズパーソン 渡邊 徹

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